職場風景

2022年現在、AIやIotなどのテクノロジーの進化によって起こっている第四次産業革命の真っ只中にあります。
今までは別の分野であり、つながりなどを認識していなかったような、あらゆるものを取り巻く環境が複雑に絡み合い、将来の予測が困難な状況にあることから、「VUCA(ブーカ)時代」と呼ばれていることをご存じでしょうか。

ちなみにIoTはInternet of Thingsの略で、これはあらゆるモノがインターネットと繋がり、情報交換をすることで相互に制御するシステムのことを指しています。

AIは人工知能のことを指しており、コンピューターが自分で判断し、動くシステムが確立できるようになることで、製造業を含め、様々な分野のさらなるデジタル化・コンピューター化が進むとされています。

第四次産業革命真っ只中の2022年ですが、実は既に第5次産業革命という言葉が使われ始めています。

第五次産業革命まだ明確な定義がされているわけではありませんが、経済産業省の資料によるとビックデータやAI技術を背景に、第4次産業革命と最新バイオテクノロジーの融合によって起こる、スマートセルインダストリー(生物による物質生産)とされています。
こちらの革命によって、医療・工業・農業・エネルギー産業など、様々な分野で活用できると期待されているのです。

好むと好まざるとに関わらず、世の中の変化が加速する中、ビジネスマンとしては時代についていき、乗り遅れないようにしていかないと、おいていかれてしまいます。

今回は、なんとなく理解したつもりになっている世の中の変化を理解し、今何をすべきなのかについて、わかりやすく説明していきます。

VUCAとは何か?をわかりやすく解説

「VUCA(ブーカ)」とはもともと、東西冷戦が終了して複雑化していった国際情勢のことを表した軍事用語です。

● 「Volatility:変動性」
● 「Uncertainty:不確実性」
● 「Complexity:複雑性」
● 「Ambiguity:曖昧性」

上記4つの頭文字から取られた造語です。

ビジネスの場では、デジタル技術の発展や世界情勢、地球環境の変化により、ビジネス環境、組織や個人の役割などが大きく変化する中で、将来の予測が困難な状況を意味する言葉として使用されています。

Volatility:変動性

デジタル技術の急速な進展により、今までの常識を全てくつがえしてしまうような、新しい商品やサービスが次々と生まれています。

そこには、地球環境の変化に対する問題意識や、世界的なパンデミックに対する対策などによる消費者の価値観や消費者の動向の変化、それに伴う市場ニーズの変化が背景にあります。

変化は一過性のモノではなく、時代の大きなうねりとなって動いていますので、その変化に対応できないビジネスは衰退し、逆に変化に対応することができれば新たな社会の仕組みとして確立され、市場を形成するチャンスが生まれ、あっという間に大きく成長できる世の中です。

例えばYoutubeの台頭によるマーケティング手法の変化が挙げられます。

視聴を想定しているターゲットの年齢や性別、住所、趣味嗜好、視聴傾向などを細かく分析し、より狭いターゲティングを行った広告戦略を打つことが出来るようになりました。

価値観の多様化から、同品種大量生産の時代から多品種少量生産の時代へと変化した社会情勢と、広告の特性がとてもマッチしており、TVなど従来のマスメディアから広告費を奪う形になっています。

Uncertainty:不確実性

気候変動による地球環境の変化や、それに伴う自然災害の増加、先進国の少子高齢化や高度成長を遂げる国での人口爆発、世界各所に火種を抱えている地域紛争、世界的なパンデミックによる経済への影響、新たなエネルギー争奪戦の勃発など、人間が過去の経験を頼りに対処することができない、外的要因を多数抱えているのが現在の世界情勢です。

この先、私たちが暮らしている環境がどのように変化していくのかを想像するのは非常に困難であり、精神的にも不安定な状態が続いています。

例えば半導体の受託生産で世界最大手の台湾のTSMCは、2021年10月に日本に半導体の新しい工場を建設する方針を明らかにしました。

世界的な半導体不足は、パンデミックによる一過性の事象ではなく、今後も継続的に発生する問題だと位置づけて、世界各国が自国に製造拠点を誘致しようと多額の補助金を投じる、誘致合戦を展開しています。

デジタル技術の発展が、今後どのような方向に進むのかについてはわからなくても、発展のスピードは加速していくことはほぼ確実であり、そのような世界が続けば半導体の需要は伸び続けるという判断によるものと考えられます。

需要が見込めるからといっても、やはり数年先の事業計画をたてるのはとても難しく、設備投資などを行うことはとても高いリスクです。
しかし、何もしないで静観しているだけでは、変化に対応できずに市場から退場せざるをえない状況になります。

Complexity:複雑性

不確実で変動制の高い要因は、それぞれが複雑に絡み合っているため、単独で問題の解決を行ってもあまり意味がなく、解決にはつながらない状況にあります。

● 特定の国や企業の力だけでは解決することができない
● 過去の問題解決方法をそのまま応用することができない
● 成功事例についても、何故成功したのかがはっきりとわからない
● 失敗事例についても、何故失敗したのかがはっきりとわからない

しかし確実に、日々世界各国において、この複雑な社会の時世を捉えた新しいビジネスは発生し、急成長しています。

例えばスペインで注目されているサービスとして「ETERNIFY」という、葬儀に関する無料アプリがあります。

アプリ上で家族が故人の特設ページを作成すると、そこに友人や親族がチャットアプリ「WhatsApp」を利用してメールでリンクを送信します。
スマホでログインすると、故人への別れのメッセージが投稿できたり、思い出の写真などをアップロードすることができ、相互にやり取りを行いながら、故人をしのぶことができるのです。

これらのサービスは全て無料で提供されている訳ですが、このサービスを活用したマネタイズの方法はいくらでも考えられます。
例えばあつまったメッセージや写真を一冊にまとめる有料サービスも有力な候補になり得ます。

SNS文化の普及によってこのようなサービスが広がったとも考えられますが、最も大きな要因として、新型コロナウィルスによるパンデミックの存在は無視できません。

ロックダウンなど、厳しい外出禁止措置などがとられたため、集まっての礼拝や葬儀を行うことができず、苦肉の策としてオンライン化が進んだという背景もあったように感じます。

これが時代背景とマッチしていたわけです。
普段なら参加しづらい遠方の人や高齢者、体が不自由な人もこのサービスを利用すれば参列することが可能であり、新たなニーズを生み出したわけです。

パンデミックが終息した後も、便利さを知ったユーザーは使い続けるサービスです。

Ambiguity:曖昧性

「Volatility:変動性」「Uncertainty:不確実性」「Complexity:複雑性」が複雑に組み合わさることで、「Ambiguity:曖昧性」な状態により拍車がかかり、最適解が見つからない状態に陥ってしまう状況になっています。

最近の大手企業は、曖昧な状況下の中で最適解が見つからないため、自社内で新しいビジネスを育てるのではなく、曖昧さのリスクがある程度排除された状態になった、成功しかけているベンチャー企業に投資や買収を行うというケースが増えています。

例えば、トヨタ自動車の子会社であるウーブン・プラネット・ホールディングス株式会社(本社:東京都中央区/CEO:ジェームス・カフナー)は、2021年7月から3カ月連続で企業買収を完了させています。

VUCA時代の企業の在り方とは

それでは、企業がVUCA時代に生き残っていくためには、何をしなければならないのでしょうか。
一番大切なのは、成功体験からの決別と固定概念の撤廃だと考えることができます。

PDCAサイクルはもう古い?今着目されているOODAループとは?

例えば長くビジネスシーンを席巻したフレームワークとして、「PDCAサイクル」という概念があります。

● Plan(計画)
● Do(実行)
● Check(測定・評価)
● Action(対策・改善)

上記の順番で仮説・検証型プロセスを循環させ、マネジメントの品質を高めようという考え方なのですが、VUCA時代に適応させようとすると、大きな欠陥が見えてきます。

このフレームワークは、最初の段階で過去の成功体験やノウハウを前提とした計画をたてる必要があります。
その後、計画をじっくり実行し、評価を繰り返すことで精度を高めていくような、業務改善に適したフレームワークなのです。

しかしVUCA時代においては、的確な状況判断に基づく迅速な意思決定が求められ、実行した内容については「Trial and Error」が許容する必要があります。

そこで着目され始めたのが、「OODAループ」というフレームワークです。

● Observe(観察):市場や顧客といった外部環境をよく観察し、生データを収集する
● Orient(状況判断):収集した生データを基に、現状を把握・理解する
● Decide(意思決定):具体的な方針やアクションプランを決める
● Act(実行):決まったことを、迅速に実行する

PDCAサイクル」との一番の違いは、計画をたてる前に状況をじっくりと観察し、収集したデータを基に状況を分析し、現状を把握したうえで計画をたてることにあります

変動性や不確実性が高く、曖昧な要素が影響するVUCAの時代では「OODAループ」を基に意思決定を行うのが望ましいと考えられるようになってきました。

リーダー層が変革の足かせになっていないか、という自助努力が必要

経済産業省が2019年3月に発表した企業への提言には、企業経営のリーダー層に対して、「率先して、VUCA時代におけるミッション・ビジョンの実現を目指し、組織や企業文化の変革を進める」ことが求められています。

「世の中に変革を起こさなければならない筈の経営リーダー層が、保守的な減点主義や過度な完璧主義にこだわり、イノベーションの芽を摘んでいないか」という提言をしているのです。

参考:経済産業省『人材競争力強化のための9つの提言(案)~日本企業の経営競争力強化に向けて~

リーダー層の多くは過去の成功者ですが、VUCAの時代を生き抜くためには、その成功体験が足かせになってしまう恐れもあります。

多様な価値観を持つ人材を集め、さまざまな立場の人々の力・知恵の結集が必要だという謙虚な姿勢をもって、経営に取り組まなければなりません。

マネジメントはもう古い?何故リーダーシップが必要とされるのか

従来のマネジメントに対するイメージは、上司から部下への一方通行的な「指導」「教育」が行われる傾向にありましたが、VUCA時代にはその考え方では対応できません。

社員それぞれの価値観や能力を活かし、新たな挑戦を行っていく必要があるVUCAの時代では、意見を引き出すために、対等な立場での「対話」が求められます。

しかしただ単に意見を集めても実際の行動には落とし込めないので、ここで大切になってくるのがリーダーシップです。

新しいことに挑戦し創造することで、会社全体を導いていくことができる、決断力と行動力を兼ね備えた人財の教育は急務であり、従来のマネジメント研修ではなく、リーダーシップ研修を行う必要があります。

おすすめのリーダーシップ研修

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組織で活躍できるリーダーには、ビジョンを語る力、マネジメント力が求められます。KeySessionでは課題解決やビジョン共有などができるリーダー育成のための「リーダーシップ研修」を紹介しています。


VUCA時代を乗り切るために求められる人事戦略とは

未来の予測が難しいVUCA時代には、めまぐるしく変化していく世の中に対して、柔軟に対応していく能力が必要となります。

企業の人事担当者の方は、今後はVUCA時代に適用できる人財を育成することを念頭において活動していただく必要があります。

今までの日本企業は減点主義による評価制度を軸として、失敗しないことが社内の評価をあげることになっていたわけですが、これからは「「失敗しても前向きに捉える力」を培っていく必要があります。

そしてもうひとつ、今まではそこにある課題をいかに解決するのかが重要だったわけですが、VUCA時代においては現状を打破するためにはどのような課題が存在しているのかを見つけ出す「課題設定能力」が求められるようになってきます。

つまり、現状に満足するのではなく、常に課題を探索し、変化を恐れずにイノベーションに取り組む勇気が必要となるわけです。

そのためには、人事制度の中で評価軸とされてきた価値観を改変し、管理層への周知徹底が必要となります。

過去の成功体験によって現在の地位を確立した管理職にとって、変化とは自分の地位を脅かす存在でしかありません。
変革というと若年層に焦点が当てられがちですが、むしろ管理層に対しての人事戦略が重要です。

最初は半ば強引でも構わないので、小さなこと、身近なことでの「変化」を体験させ、実際に行ったことで「変化」することができたという成功体験の積み重ねながら、「変化」の重要性に気付き、問題意識を持って行動することができるように導いていく必要があります。

実践を通して、リーダーシップの取り方や決断力を体験させていくわけです。
ここでこそOODAループのフレームワークを活用していく必要があります。

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優秀な人材が管理職への転向をスムーズに行えるように、そして管理職としての任務を存分に果たしてもらえるようにサポートするのも企業の大切な役割です。管理職が安心して働けるように必要な管理職向け研修の内容について紹介します。


変化がある時代だから面白い

NHKが毎年放映している大河ドラマにおいて、時代として人気があるのが戦国時代か幕末です。

戦国時代や幕末はキャラクターの宝庫であり、優秀な人財が多かったというイメージが強いと思いますが、決してその時代にしか優秀な人財がいなかったというわけではない筈です。

天下泰平の世の中であった江戸時代などは、ルールや常識などに縛られ、外的な変化もさほど起きなかったため、革新的な考え方や行動をする人財は求められていませんでした。

恐らくは優秀な人財はいた筈ですが、革新的な人財が歴史の大舞台には登場する場面がなかったわけです。

VUCA時代と称される現代は、正に戦国時代や幕末と同じような状況です。

過去の常識や成功体験が活かせるような状況ではなく、創造性が問われる時代であり、その時代に生きている人にとっては、戦国時代の下剋上や、幕末時代の新政府樹立などを成し遂げることができるような、大チャンスの時代であると言えます。

数年前には名もなかったような企業が世界を席巻し、一時代を築き上げたような大企業が、その必要性を失い消滅していく、そのような時代に生きていることに喜びを感じ、VUCA時代を満喫する術を、ぜひ身に着けていってください。

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