メンターという言葉を聞いたことのある人は多いと思います。メンター制度を導入している企業も増えてきており、ビジネスにおいてもメンターは必要な存在です。
しかし、正しい知識がなければ、メンターになることに抵抗を感じたり、何をして良いかわからず戸惑ったりと、せっかくの制度が機能しなくなってしまいます。
ここでは、メンターの役割とメンターになるメリットなどを解説しています。これからメンターを担う人にはぜひ読んでいただきたい内容です。
目次
メンターとは
メンターの語源は、ギリシャ叙事詩に出てくる賢者『メントル』です。オデュッセウス王の息子テレマコスの教育係を任され、将来立派な王になれるように指導した人物です。
ここから、仕事に限らず、良き指導者、良き相談者という意味で使われるようになりました。
メンターに支援してもらう対象をメンティーを言い、信頼関係がとても大切になります。
日本メンター協会ではメンターとメンティーの信頼関係を『何でも話せる関係』と定義付けており、メンターのイメージを次のように表現しています。
① 仕事の面でも、プライベートの面でも安心して相談できる人
② どのような相談でも、共に悩み、考え、支え、称えてくれる人
③ できる範囲で、有形無形問わず力になってくれる人
④ 特別に振る舞うことはせず、ありのままの態度で接してくれる人
⑤ 同じ目線で、フラット(対等)な立場で対話してくれる人
⑥ メンティーと共に成長する人
引用・参考サイト:日本メンター協会
企業ではメンターは経験豊富な社員がなり、メンティーは新入社員や若手社員といった、経験の浅い社員が対象になることがほとんどです。
また、直属の上司が先輩がなる場合もありますし、他部署の社員が担うこともあります。他部署社員の場合は、直接の上司には話しにくいことも相談しやすいというメリットがあります。
ビジネスにおけるメンターの役割
ビジネスでは社員教育の方法としてメンター制度を取り入れているケースもあり、メンターの役割は次のようなことが挙げられます。
メンティーの理想と現実のギャップをサポート
夢と理想を持って入社した社員が、実際に仕事をしていく中で、「イメージしたものと違う」と感じ、現実とのギャップに悩むことがあります。
メンターは、このギャップを埋めるための具体的な行動を一緒に考えます。
業務に関する相談・アドバイス
職場においてメンターはメンティーの直接の先輩や上司のことが多く、業務での疑問やメンティーの課題についてのアドバイスをします。
メンティーがひとりで悩むことを減らし、安心して仕事に取り組めるサポートも大切な役割です。
問題に直面した時の援助
仕事をしていると必ず壁に当たります。この時、自分の課題に気づき解決できる人もいると思いますが、経験が浅いと課題がわからずどう改善して良いかわからなくなります。
メンターはメンティーの課題を明確にし、乗り越えるための行動面と精神面の両方をサポートします。
目標設定のサポート
仕事に対して意欲を持つために目標設定は大切です。メンティーが自身の現状を理解し、成長するための目標設定ができるようにサポートします。
そして、目標までどのくらいのところまで来ているのか、達成までに何が必要かなどを、定期的に話をすることで明確にしていきます。
メンターに必要なもの
メンターは特殊スキルが必要ではなく、ごく普通の人で良いのです。しかし、次のようなスキルや人間性があると頼れるメンターと言われます。
コミュニケーション力
メンターとメンティーの間には信頼関係が不可欠です。
プライベートであればある程度人間関係ができてから、メンターになることも多いのですが、仕事ではまだお互いを知らない状態で、メンターとメンティーの関係性になることがほとんどです。
メンターから距離を縮める努力が必要で、コミュニケーションが上手に取れると信頼関係を築くのに時間がかかりません。
俯瞰的視点
メンターは冷静で中立である必要があります。感情に流されることなく、事実を把握しなければなりません。
広い視野、柔軟な思考を持って指導することが求められます。
仕事の実務経験
メンターは精神的な支えだけではなく、実務についての悩みや疑問も解決に導かなくてはなりません。
そのため、十分な実務経験がなければなりません。一緒に悩むだけでしたら同僚や友人でも良いということになってしまいます。
メンティーが安心して前に進めるように、経験から伝えることも大切なのです。
面倒見の良さ
メンティーが壁に当たった時、迷った時などに答えを教えるのではなく、本人が気づくまで待つことも必要になります。
また、メンティーが成長をした時、一緒に喜べる気持ちも大切です。
変化に気づき、必要な時に必要な援助ができるような面倒見の良さがメンターには不可欠です。
メンターになるメリット
メンターになると本来の仕事以外のことが増えるため、できればなりたくないと感じるかもしれません。しかし、メンターになることでメリットもあります。
自分の成長につながる
メンターの役割はメンティーの成長のために、見守りとサポートをすることです。
業務上の悩みや疑問を解決するには、仕事を理解していなければなりません。そのため今までうろ覚えだったことや自信のなかったことも改めて勉強することになります。
また、プライベートな悩みに関わることもあり、社会人としてだけではなく、人としての資質を磨く経験ができます。
仕事に対する責任感が増す
仕事に対する姿勢を見せることもメンターとしての大切な役割です。自分が中途半端なことをしているとアドバイスをしても説得力がありません。
メンティーに見られているという意識は、上司に見られているというものとは違う感覚になり、今まで以上に仕事に対する真摯さや責任感が出てきます。
客観性が身に付く
メンターはメンティーを理解し、同じ目線で接することが大切です。だからといって、肩入れをするのとは違います。
良き相談者、指導者としてどのような状況でも冷静に対処しなければなりません。このことを意識して過ごすことで、自然と客観性が身に付いてきます。
指導者としてのやりがいを感じられる
メンティーが成長した姿を目の当たりにすると、これまでのサポートが実を結んだと達成感が得られます。
指導する楽しさを感じることができ、やりがいを持つことができます。指導者としての経験は今後のキャリアにも生かせますし、自分の自信にもつながります。

今だからこそ必要なメンター
テレワークや時差通勤など、今までと違う働き方を余儀なくされている現在だからこそ、人材教育はさらに大切になってきます。
メンターになることは誰でも可能ですが、効果的に指導ができるようにメンター育成も必要です。
研修等でメンターとしての資質磨きをして、頼れるメンターを育てましょう。