人材育成

パワハラ防止法により明確になったパワハラの定義と企業の義務

さまざまな職種の人々

2020年6月1日からパワハラ防止法が施行されました。

ハラスメントは20年以上前から問題が取り上げられており、現在では40以上の種類のハラスメントがあります。

その中でも働く人全員が加害者、被害者になる可能性あるのがパワハラです。

パワハラ防止法の中で企業の義務が明記されています。正しく理解しパワハラとは無縁の企業を作るよう体制を整えましょう

パワハラ防止法の概要

清々しい表情のビジネスパーソンたち
パワハラ防止法は正式には「改正労働施策総合推進法」という法律です。なぜ制定され、反するとどのような罰則があるのでしょうか。まずは概要を説明します。

策定の背景

パワハラはという言葉は、2001年にハラスメントの相談窓口をしていたコンサルティング会社が提唱しました。

この約10年後に厚生労働省は「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ」を開催し、定期的にパワハラの実態調査や対策について話し合われてきました。

厚生労働省の調査によると3年以内に職場でのパワハラを受けた経験がある人は、3人に1人という結果が出ています。

さらに労働基準監督署に寄せられる相談内容で、パワハラに関することが急増してきている現状を踏まえ、パワハラに関する対策を進める必要があると考え、法律化することとなりました。

施行時期

大企業は2020年6月1日より施行されますが、中小企業は2年間の準備期間を置き2022年4月1日からの施行です。中小企業は2022年3月31日までは努力義務となります。

罰則

違反しても罰則はありません。

そのため効力がないのではないかと思われるかもしれませんが、厚生労働大臣は必要に応じて、企業に対し助言、指導、勧告をおこなえるとしています。

勧告に応じず、改善が見られないと判断されると、企業名を公表される可能性があります。

パワハラの定義

次の3つをすべて満たした場合に、パワハラと認められます。

✅ 優越的な関係を背景とした言動

✅ 業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの

✅ 労働者の就業環境が害されるもの

優越的な関係とは、上司と部下という立場だけではなく、特別な資格や技術を持っている社員と持っていない社員間や、同僚や部下であっても集団で拒絶しにくいことを指します。

例えば、部下10人全員で上司に対して

「こんな仕事できませんけど」
「これを(上司が)やってもらわなきゃ、仕事進まないんですけど」

というように上司に対して部下が圧をかけて、上司が「できない」「無理」「みんなでやって」などの意見が言えない状況、上司が『はい』か『yes』しか言えない状況を作ることもパワハラになります。

同僚から同僚へのパワハラも同じです。
ひとりの人に対して、集団で追い込むこともパワハラになります。

このようにパワハラは上司と部下の間で起こると考えがちですが、同僚間や部下から上司もあり得ることを覚えておきましょう。

対象は、同じ職場で働く従業員全員となっており、正社員、計約社員、パート、アルバイトなど、雇用形態は関係ありません。

さらに、オフィスだけにとどまらず、出張先や職場主体の食事会や飲み会での言動も対象になります

パワハラの現場
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企業が担う4つの義務

部下を指導する女性
パワハラ防止法の中で、企業が負うべき義務が明記されており、4つの義務を果たさなければなりません。

対応体制の整備

パワハラについての相談窓口の設置が必要です。相談担当者が適切な対応ができるように、マニュアルや制度を整えます。

さらに各部署が連携して対応できるような体制も大切です。

必要に応じて、外部の相談窓口を活用できるように就業規則等で紹介するのも必要です。

不利益な扱いをしない

相談者のプライバシーを守ることは当然ですし、相談をしたことで解雇や降格などの不当な扱いを受けないようにしなければなりません。

社員への周知と教育

企業がおこなうパワハラ対策を社員全員に周知します。

事業主から全社員へメールや文章を回す、就業規則に明記するなどの措置が必要です。

さらに一人ひとりが正しい知識を持って仕事に臨めるように、研修等で教育をおこないます。

事業主自らの努力義務

事業主や役員、管理職は社員に教育をおこなうだけではなく、自らもパワハラについて理解し、社員に対しての言動に注意を払わなければなりません。

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6種類のパワハラ典型例

パワハラ定義6例
パワハラ防止法ではパワハラの典型的な例として6種類を挙げています。しかし、これ以外にも定義に当てはまればパワハラとされます。

身体的な攻撃

故意に殴ったり蹴ったり、物を投げつけるなどがこれに当たります。他にも髪を引っ張るなど身体的な苦痛を伴うものです。

たまたま落としたものが当たってしまった、意図せずぶつかってしまったなどは、対象になりません。

精神的な攻撃

人格を否定するような言動、人がいる前で威圧的な言動で叱責する、何度も長時間にわたる叱責を繰り返す、他の社員が見ることができるメールで罵倒するなどです。

部下が何度も同じミスをし、再三に渡って注意をしたにも関わらず改善が見らなかった、業務上重要な問題があった場合には、強く注意をしてもパワハラにはならないと考えられます。

人間関係からの切り離し

適正な理由なく業務から外す、一人だけ仕事部屋を隔離する、社員全員で一人を無視するなどです。孤立するような状況を意図的に作ることはパワハラになります。

会社主宰のレクリエーションや食事会などに、一人だけ誘わないのも当てはまります。

社員育成や就業規則に従って、別室で業務や研修をおこなう必要があると判断された場合は当てはまりません。

過大な要求

長時間過酷な労働を強いる、適切な教育をしていない社員に対応できない業務を命令し、できなかった時に強く叱責する、業務に直接関係ない雑用などを強制するなどです。

社員育成上、必要と判断したレベルの仕事を任せる、繁忙期に一定期間通常よりも多い業務をお願いすることは対象となならないと考えられます。

過小な要求

退職に追い込むために、どうでも良い仕事を命じる、わざと仕事を与えないなどがこれに当たります。

能力よりも明らかに少ない量や、その人ではなくても良い仕事をさせ続けることはパワハラです。

本人の体調や閑散期などに業務調整をするのは対象ではありません。

個の侵害

職場外で社員を監視したり、本人の了承を得ずプライベートなことを他の社員に話すなど、業務に直接関係のない私的なことに立ち入るが挙げられます。

個人のデスクの引き出しを黙って開ける、カバンの中を勝手に見るなども個の侵害と言えます。

業務上必要とされる場合に、本人の了承を得て他部署への情報提供や本人への聞き取りの場合は対象になりません。

上司から指示を受ける社員
上司からの叱責がパワハラと認定されなかった裁判事例を解説「された方が恐怖や不快感を持ったらパワハラ」と認識している人は多いのですが、今はパワハラ防止法の中で具体的な例が示されているため、一概に相手次第ということにもならなくなっています。ここでは、上司からの叱責がパワハラと認められなかった裁判実例について解説していきます。...

パワハラ対策が当たり前の時代に

積極的な意見が飛び交う会議
パワハラがクローズアップされるようになってから長い時間が経っていますが、ようやく法整備がなされ、基準が明確になりました。

パワハラは社員の育成を阻み、優秀な人材を失うことになるとともに、企業の発展も失速させます。

これからは対策をしているのが当たり前の時代です。誰もが安心して働ける環境であるように、パワハラ防止法に基づき体制を整備していきましょう。

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