チームをまとめるマネージャー

ビジネスにおいて最近よく使われる「ジェネラリスト」という用語。具体的にどのような人材を意味するのか知っていますか?

この記事では、「スペシャリスト」との違いやジェネラリストの育成方法、どのような職種やキャリアパスがあるのかを解説していきます。ジェネラリストの育成が企業にとって重要な課題であることを理解し、育成に取り組んでいきましょう。

ジェネラリストを簡単に説明

「ジェネラリスト」を簡単に解説すると、幅広い知識や技能、経験などを備え、あらゆる方面で活躍できる人のことです。

ビジネスにおいても、広範な知識やスキルを持ち、いろいろな局面で活躍できる人のことを指します。自分の専門分野だけでなく幅広い知識を持つため、プロジェクト全体を把握できる特徴があります。各部署の悩みが理解できるので、各分野の担当者をまとめるのに長けています。

また、状況の変化に臨機応変に対応できる人のことを、ジェネラリストと呼ぶ場合もあります。どんなシーンでも活躍できる、オールマイティな人材と言えます。

ジェネラリストは一人で何役もこなせる人材なので、ベンチャー企業や中小企業など、規模の小さい組織で特に重宝されます。少数精鋭で戦う企業にとって必須のプロフェッショナル人材です。

ジェネラリストとスペシャリストの違い

ジェネラリストとスペシャリストの違い
「ジェネラリスト」の反対は「スペシャリスト」です。どちらもビジネスにおけるプロフェッショナル人材を指す言葉なので、スペシャリストの意味を中心に、違いを解説していきます。

スペシャリストは、「専門家」や「専門職」という意味の英語です。ある分野について深い知識や高度な技能を持っていたり、特別な資格を持っていたりする人のことを指します。ジェネラリストが幅広い知識を持つオールラウンダーなのに対し、スペシャリストは特定の分野に特化し、その領域では誰よりも能力を発揮できる人材です。

ただし、スペシャリストの課題として、自分の専門領域以外はわからないことが挙げられます。わからなくても興味を持ったり協力できるメンバーであれば構いませんが、「自分の担当外のことはどうでもいい、知らない」といった態度を取るメンバーの場合、協調性を理解してもらう必要があります。

また、高い専門性を持つスペシャリストがプロフェッショナルだという認識が広まっており、ジェネラリストはプロではないとされることがあります。これは誤った認識で、両者に優劣はなく、ジェネラリストもプロフェッショナル人材です。スペシャリストは狭く深く、ジェネラリストは広く浅くというカバー領域と深度が異なるだけです。

業種別のジェネラリスト

ジェネラリストになるかスペシャリストになるかは、適性を踏まえて働きながら決めていくことが多いです。一般的には、キャリアの初期段階でいろいろな経験をし、ジェネラリストになるかスペシャリストになるか決め、中堅・ベテランへと階段を登っていきます。

社員は自分が就こうとしている職種には、どのようなジェネラリスト・スペシャリストがいるのかを知り、自分はどちらを目指したいのか明確にすることが重要です。この章では、看護、福祉、IT業界それぞれのジェネラリストを解説します。

看護

日本看護協会では、ジェネラリストを「経験と継続教育によって習得した暗黙知に基づき、その場に応じた知識・技術・能力が発揮できる者」と定義しています。

少し難しい用語が出てきましたが、実務経験を積んで教科書では学べない知識を身につけ、その場に応じて臨機応変な対応ができる人のことです。看護は対象者によって仕事内容や相手のニーズが異なるので、どのような人が相手でも、その人に合ったサービスを提供する必要があります。そのためには多様な経験が必要なので、ジェネラリストが活躍できる分野です。

一方、看護師のスペシャリストはがん看護・精神看護・小児看護・老人看護・母性看護など、得意な専門領域があり、資格を保有している人のことなどを指します。ジェネラリストはこれらの領域を幅広く経験した人と言えます。

福祉

福祉領域では、社会福祉士がジェネラリストとされています。

福祉とは社会的弱者をサポートすることで、障害(知的、精神、身体)、高齢、児童、経済困窮者、ひとり親家庭、女性といった人々が該当します。社会福祉士はこれらすべての領域の知識を身につけ、サポートを行います。

実際の就職先では、「障害者向け施設」「高齢者向け施設」など担当領域が分かれるので、スペシャリストだけがいれば良いと思われるかもしれません。しかし、福祉の問題は複雑で、「貧困かつ高齢」「児童かつひとり親家庭」など、課題が併発していることが多いです。決まった領域だけを担当しているつもりでも、その外側の問題にぶつかるケースが多いので、各分野の広範な知識を持つジェネラリストの存在が必要です。

IT

IT領域は、ジェネラリストとスペシャリストの役割が比較的はっきりと分かれています。

IT業界のジェネラリストは、プロジェクトマネージャーやITコンサルタントなど、プロジェクト全体を見る立場にアサインされることが多いです。幅広い知識を持っており、プロジェクト全体を管理する仕事に向いているためです。プロジェクト全体を統括し、各工程のメンバーとやり取りしたり、顧客とコミュニケーションを取ったりする仕事を行います。

一方のスペシャリストは、システム開発の各工程で専門領域を担当します。例えばプログラマーは、ソフトや仕様に応じた言語で開発を行い、工程で要求されるプロダクトを制作します。スペシャリストは各工程を担当し、全体を管理するのがジェネラリストです。

ジェネラリストの特徴と向いているポジション

ジェネラリストが向いているポジションは、管理職やマネージャー、総務や人事と言われています。また、創業間もないベンチャー企業など少数精鋭企業の社員も向いています。

なぜこうしたポジションが向いているのか、ジェネラリストの特徴を整理しながら理解していきましょう。

全体を見る力がある

ジェネラリストの最大の特徴は、幅広い知識や技能を活かし、チーム全体を見る力があることです。各方面の仕事を大まかにでも理解できているので、プロジェクトの全体像を見ることができるのです。そのため、プロジェクト全体を管理するポジションである、管理職やマネージャーが向いています。

また、ジェネラリストは組織のリーダーに適している特徴を持っています。豊富な知識を持っており、各メンバーが抱えている現場の課題にも理解を示せるので、メンバーにとって相談しやすい人材だからです。メンバーからの信頼が厚いので、ジェネラリストは人を率いるポジションに向いています。

臨機応変な対応が得意

ジェネラリストは幅広い知識を持っているので、一人で何役もこなさなければならない、総務や人事などのバックオフィス系の業務に向いています。ケースバイケースで臨機応変に対応しなければならない業務に向いているのです。

例えば総務部なら、労務や経理、契約管理に加え、どこの部署の担当でもない庶務が降りかかってきます。企業経営に関する幅広い知識が必要なのはもとより、案件ごとに臨機応変に対応する能力が求められます。必要に応じて他部署と連携を取りますが、どの部署の誰に連絡を取ったら良いのか判断するのは、まさに豊富な知識を持つジェネラリストが得意とする仕事です。

また、人事部も新卒採用や中途採用、社員のスキルアップ、給与支払いの管理など、人に関わるさまざまな業務を一手に請け負います。社内外を問わずあらゆる人と連携を取りながら業務を進めるので、臨機応変に対応できるジェネラリストに向いています。

バックオフィス系の職種で、ルーティン業務が少なく臨機応変な対応が求められる部署は、ジェネラリストに向いていると言えます。

マルチな知識を持っている

ジェネラリストは多方面における広範な知識を持っているので、一人でさまざまな業務をこなすことができます。そのため、少数精鋭で会社を回さなければならないベンチャー企業で特に活躍します。

創業したばかりのベンチャー企業はあまり大人数を雇う余裕がないので、多くの場合、メンバーは少人数です。また、仕事のやり方もマニュアル化されていません。やるべきことを社員が自分で見つけて取り組む必要があります。その場その場で必要なことを瞬時に判断しなければならないので、幅広い知識を持ち、プロジェクト全体を見る力があるジェネラリストが活躍しやすいです。

ジェネラリストの育成方法

少人数でビジネスを回すベンチャー企業や中小企業にとって、一人で何役もこなせるジェネラリストはとても助かる存在です。しかし、労力をかけずに勝手に育つものではありません。この章では、ジェネラリストを育成する方法を解説します。

素養のある人材を選出する

まず、ジェネラリストの素養を持つ人材を厳選しましょう。

人には向き不向きがあるので、ジェネラリスト向きの人とスペシャリスト向きの人がいます。特定の分野の専門性を極めるよりも、幅広くいろいろな業務を経験することにやりがいを感じる人など、前向きにジェネラリストを目指せる人を選出しましょう。

ジェネラリストに向いていない人をジェネラリストに育てようとしても、本人に過度なストレスがかかり、良い結果は望めません。適性があり、ジェネラリストを目指したいと考えている人を選び、育成していきましょう。

適性を見極めるためには、普段の仕事について直属の上司からヒアリングしたり、面談の機会を設けて本人が望むキャリアパスをヒアリングしたりする方法が考えられます。普段の仕事ぶりから適性を判断するだけでなく、本人がジェネラリストを志望しているかも確認しましょう。

幅広い業務の経験を積ませる

ジェネラリストを育成するには、社内のいろいろな部署の業務を経験してもらうことが重要です。部署が複数ある大企業の場合、数年おきに配置換えを行い、多種多様な業務に触れてもらいましょう。

また、総務部のように臨機応変な対応が必要な部署で経験を積ませることも有効です。営業や事務などほかの部門の人は、どこに問い合わせたら良いのかわからない案件に出くわすと、総務部に頼りがちではないでしょうか。総務部は各部門からの問い合わせに応じ、会社全体のビジネスの交通整理をする部署とも言えます。こうした部署を経験してもらえば、臨機応変な対応やマルチタスクに慣れることができ、また会社全体の動きを俯瞰することもできるので、ジェネラリストとしての能力を養えます。

ジェネラリストを育てる研修を導入する

社内の教育だけでジェネラリストを育成するには、会社に育成ノウハウが溜まってなければ難しいです。ジェネラリストの育成実績がない企業は、外部の講師が指導する企業研修を導入しましょう。

ジェネラリストを育成するのにおすすめの研修は、マネジメント研修やリーダーシップ研修、チームビルディング研修など、組織を率いるポジション向けの研修です。チーム全体を俯瞰して状況を把握したり、スケジュールを組んだりする方法を学べるので、ジェネラリストの業務に活かせるはずです。リーダーとして必要な判断力や決断力も、研修で高めることができます。

また、コミュニケーション研修もおすすめです。ジェネラリストはリーダーのポジションになることが多いので、メンバーが気軽に相談しやすい雰囲気を作るのも重要な仕事です。コミュニケーション研修を受講してもらい、ビジネスを成功に導くための対話を身につけてもらいましょう。

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ジェネラリストのキャリアパス

ジェネラリストは幅広い部署の業務を経験して成長するので、キャリアパスは人それぞれです。ひとつの部署に固定されることなく、数年おきに部署を移動します。場合によっては、前の部署とは全く異なる仕事をする部署に異動することもあります。

ひとつの部署を数年しか経験できないので、専門性が身につかないと悩む方がいますが、ジェネラリストに期待されることをはき違えているかもしれません。ジェネラリストに期待されるのは、ある部署での経験を別の部署で活かすなど、広範な知見を活かすことです。目の前の仕事に集中するのは一見良いことですが、前の部署の経験を忘れることなく、会社のビジネス全体を把握する視座を持ちましょう。

一般的には年次が上がるに伴い、リーダー職を任せられるようになります。若手社員や中堅社員のうちから、大小さまざまなプロジェクトのリーダーとして組織を率います。いろいろな部署からメンバーが集まるプロジェクトでは、各部署を経験して得た知見が役に立つはずです。

ゆくゆくは管理職や幹部役員となり、会社を率いる人材になることが期待されます。

ジェネラリストとスペシャリスト、どちらを目指すべきなのか?

ジェネラリストもスペシャリストも、企業や社会にとって必要なプロフェッショナル人材です。ただし、ジェネラリスト向きの人とスペシャリスト向きの人がいるので、自分に合ったほうを目指すのが良いです。

もし1つの会社に腰を落ち着けて勤め上げたいなら、ジェネラリストのほうが向いている可能性があります。ジェネラリストは管理職や幹部役員への出世が見込めるからです。反対に、転職ではスペシャリストよりも不利になりがちです。組織の各部署の業務に精通しているといっても、会社を辞めたらその知見の価値が下がってしまうかもしれないからです。転職先の会社でもその知見が活かせるとは限りません。

手に職をつけて独立したい場合は、スペシャリストのほうが向いている可能性があります。専門性の高い知見や技術を持っていれば、それを売りにビジネスを起こせるからです。一方、1つの会社の中の出世のしやすさでは、ジェネラリストに劣る傾向があります。スペシャリストはマネジメントよりも現場のプレーヤーであるケースが多く、管理職など組織を率いる立場にアサインされにくいからです。

いずれのキャリアを目指すにせよ、自分の適性を冷静に評価し、自分が納得できるキャリアビジョンを持つことが重要です。どっちつかずな姿勢で仕事をしていては、ジェネラリストにもスペシャリストにもなれません。活躍できるビジネスパーソンになるためには、どちらを目指すにせよ、成長に貪欲になる必要があります。

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