コンピテンシーとは 面接・人事評価の導入についても解説

コンピテンシーはアメリカでは日本よりも10年ほど早く企業に浸透しています。その理由は、企業の成長にコンピテンシー導入が有効だと認識されているからです。

この記事では、

  • コンピテンシーとは何か
  • 面接や人事評価に導入するとどんなメリットがあるのか
  • 正しくコンピテンシーを導入する方法
  • コンピテンシーの注意点

など、コンピテンシーについて網羅的に解説します。

コンピテンシーは企業の生産性向上のヒントです。正しい知識を身に付け、導入を検討しましょう。

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コンピテンシーとは

人事界隈で使用される「コンピテンシー」の意味は、高い評価に値する社員に共通する「行動規範」です。
優秀な社員たちは、優れた働きを実現するための意識と、そこから生まれる行動を持ち、それらの共通項を「行動規範」と捉えます。

知識やスキルとの違い

知識やスキルとコンピテンシーは一見似ていますが、まったくの別物です。
知識やスキルとは、個人が「何を知っているのか」、「何ができるのか」です。

一方コンピテンシーは、「何をしようとするか」、「何をするか」です。

例えば、
「知識やスキルに秀でてはいるものの、任された仕事しかしないAさん」と、
「知識やスキルはAさんには劣るものの、任された仕事以上の成果を生み出そうと考え行動するBさん」がいるとします。

知識やスキルで人材を評価するとBさんよりAさん方が優秀な人物となります。
一方、コンピテンシーで評価すると、成果を生み出すための意識と行動を実現できるBさんの方が高く評価されます。

知識やスキルとは前提であり、「何を意識し」、「どんな行動をしたか」がコンピテンシーでは重要です。

コンピテンシーの5段階レベル

コンピテンシーの5段階レベル
コンピテンシーによる評価は、5段階のレベルに分けられます。
評価対象の社員が、いかに能動的に行動をしているかで判断します。
低いレベルから順番に解説します。

レベル1.受動行動
受動行動は指示があれば行動し、指示が無ければ何をすればいいかわからない状態です。
能動的に行動するわけではないので、意思が一貫することはなく、その場その場の行動しかしません。

レベル2.通常行動
通常行動は、任された仕事をミスしないよう注意して取り組む状態です。割り振られた仕事をしっかり実施しようという意思はあるものの、それ以上の成果を生み出そうとは考えません。普通レベルの評価です。

レベル3.能動・主体行動
能動・主体行動は明確な目的意識を持ち、目的を達成するために考え行動できる状態です。目的のために知識が必要なら勉強し、スキルが必要なら努力をできます。工夫して仕事に取り組めるので、新たなアイデアを生み出すこともあります。

レベル4.創造・課題解決行動
創造・課題解決行動は現状をより良いものにしようと変革を起こせる状態です。
PDCAサイクルを回しての行動を実施し、新たなプロジェクトに自発的に意見することもあります。

レベル5.パラダイム変換行動
パラダイム変換行動は周囲を巻き込んで、目新しいアイデアで状況を好転させる状態です。1000人に1人程度の割合で存在するともされており、貴重な人材です。

コンピテンシーが注目される理由

コンピテンシーが注目される理由は、日本の企業が年功序列型から成果主義型に移行する傾向にあるからです。
成果主義型の評価では、社員の成果だけでなく、成果に繋がる行動を取れるかどうかを考慮する必要があります。また、成果主義型の企業が増えているため、競合との争いは激化傾向にあります。

企業は競争に勝つために優秀な社員を増やす必要があり、コンピテンシーにより社員を評価し成長させることが注目を集めています。

コンピテンシー面接を取り入れるメリット

成長意欲が高いチーム
コンピテンシー面接とは、応募者が採用後に能力を発揮するかを評価する面接です。
このコンピテンシー面接は通常の面接とは違い、過去のエピソードに対し「どのように考え」、「どのように行動したか」を把握できるのが特徴です。

例えば「リーダーシップを発揮したエピソード」ならば、「なぜリーダーシップを発揮したのか」、「どう考えて、どう行動したか」を明らかにできます。
また、コンピテンシー面接を取り入れるメリットは「優秀な人材の獲得」、「採用基準の体系化」、「本質を評価しやすい」の3つです。

優秀な人材の獲得

コンピテンシーを取り入れた面接であれば、応募者が将来的に企業に貢献できる人材かどうかの判断ができます。
現状のスキルが低めでも、高いコンピテンシーを持ち合わせている人材を採用すれば、育成次第で優秀に成長します。それは能力を仕事に活かすだけの意思と行動の意欲を持ち合わせているからです。

一方、現状のスキルや知識を重視して採用した人材は、能力を持ってはいるものの行動を起こさない場合があります。
将来的に企業に貢献できる人材を採用したいならば、コンピテンシーを重視した採用が望ましいです。

採用基準の体系化

コンピテンシーを重視すると、面接官の主観的な評価ではなく体系化された評価を実現できます。せっかく応募者が優秀な人材だったとしても、主観的な評価では採用に至らないケースがあります。
共通のコンピテンシーを基準に設けておくと、優秀な人材の取り逃しは減少し、反対に本来は不採用に値する人材を招き入れるケースも少なくなります。
従来の面接では、面接官の直観が介入する比率が高いことが問題視されています。コンピテンシーを導入することで、今までの面接のデメリットを排除できます。

本質を評価しやすい

面接に訪れる応募者は、採用されるためのテクニックを身に着けており、面接官が本質を評価するのは難しい問題です。しかし、コンピテンシーを導入した面接ならば、エピソードを深掘りすることで、応募者の本質を引き出せます。
本質から、採用後に求められる成果を生み出す人材かどうかのジャッジを下せるのです。

「面接上手な人」ではなく「企業で活躍する人」の採用が可能です。

コンピテンシー面接の正しい導入ステップ

コンピテンシー面接の正しい導入ステップを説明します。
優秀な人材を獲得するために、誤りのないコンピテンシー面接を実施しましょう。

採用基準を明確に設ける

コンピテンシー面接を導入するには、まず採用基準の設定が必要です。
先ほどご説明したコンピテンシーの5段階モデルである、

  1. 受動行動
  2. 通常行動
  3. 能動・主体行動
  4. 創造・課題解決行動
  5. パラダイム変換行動

これらに企業や部署で求める人材のコンピテンシーを当てはめます。
それぞれの段階にどのような人材が該当するかを明確に定めましょう。
コンピテンシーの設定は骨の折れる手順ですが、ここで手を抜くと前提から崩壊してしまうので時間をかけるべきです。
応募者をコンピテンシーで5段階に評価できる状態にしましょう。

コンピテンシーのテストを行う

面接におけるコンピテンシーの基準が完成したら、正しく機能するかテストします。
社内の優秀な人材を、コンピテンシーを導入した面接で評価した際に、採用に値するかを確認します。
もしテストの結果、優秀な社員が採用とならず、そうでない社員が採用になった場合は、コンピテンシーが正しく機能していません。
最初から完全なコンピテンシーの評価基準を設定するのは困難です。繰り返しテストを行い、コンピテンシーをブラッシュアップしましょう。また、運営方針や求める人材が変化したなら、採用基準に反映させる必要があります。
コンピテンシーの研鑽を続けることで、優秀な人材を獲得でき、どの面接官でも共通の応募者を評価できるのです。

具体的な行動を質問する

面接時には、応募者に具体的にどういった行動をしてきたかを質問することでコンピテンシーを評価できます。コツは応募者の話に対し、「例えば?」と問い、深掘りすることです。
応募者の自分の強みや、過去に成果を上げた事例などの話に具体的な話を追加で話してもらうイメージです。

具体的な話を聞くことで、目的達成や問題解決の際に、どういった意識を持ち、どう行動する人材であるかを確認できます。最後に、応募者の具体的な話がコンピテンシーの5段階のどれに該当するかを判断すれば、面接官の感性に依存しない評価を下せます。

コンピテンシーを人事評価に取り入れるメリット

コンピテンシーのメリット
出典:画像centranum:『なぜコンピテンシー?』より

コンピテンシーを人事評価に取り入れるメリットは5つです。

上長の感性に依存しない評価ができる

人事評価に対して社員が不満に感じる最たる例は、上長の感性次第で評価にバラツキがあることです。上長と部下の相性や、男女の差などが要因で平等な評価が下されないケースはよくあります。
これでは、企業に貢献できる人材を正しく評価できません。コンピテンシーを取り入れた人事評価ならば、明確な基準が設定されるため、平等な評価を下せます。
また成果ではなく、取り組みの姿勢を評価するため、社員が抱える仕事の内容に影響されない評価を実現できます。

評価に対する納得性が高まる

人事評価にコンピテンシーを取り入れると、評価に対する社員の納得性は高まります。
コンピテンシーにより上長が感性を度外視して部下を評価できるように、評価された側の社員も客観的に自分の評価が妥当か判断できます。
自分の働きのコンピテンシーレベルがどの程度か考えると、下される評価に納得できるのです。

将来性のある社員を評価できる

コンピテンシーを取り入れた評価ならば、知識とスキルを身に付ければ活躍できるような将来性のある社員を評価できます。
成果のみを評価基準とすると、能動的に行動できる社員が埋もれてしまいます。自ら考え行動できる社員は問題解決に注力でき、企業に変革をもたらします。
成果主義型ではコンピテンシーレベルの高い社員を評価する必要があり、またそういった社員は、企業が競合との争いを勝ち抜くために評価すべき人物でもあります。

社員のモチベーションが維持される

評価の基準が明確になると、社員はモチベーションを維持して働けます。また、成果だけでなく取り組みの意思や行動も評価されるとなれば主体性は向上し、結果として目覚ましい成果を収めます。
社員それぞれのモチベーションが維持されれば、企業の生産性向上に繋がります。

人事評価担当者の負担が軽減される

コンピテンシーが取り入れられていないと、人事評価担当者は明確な基準を持たないまま評価しなければなりません。コンピテンシーを活用すれば、人事評価担当者が判断する要素は減少し、スムーズに評価を下せます。

コンピテンシー評価の正しい導入ステップ

コンピテンシー評価の正しい導入ステップをお伝えします。正しく導入し、企業の生産性向上に繋げましょう。

ハイパフォーマーの調査

複数の優秀な社員、すなわちハイパフォーマーの調査を行い、共通する行動規範を導き出しましょう。
ハイパフォーマー本人でも無自覚の行動規範を持ち合わせている場合があるので、本人だけでなく、一緒に働く同僚にも聞き込みをします。
共通する行動規範を抽出できたら、「目標にすべきモデル」を設定します。
モデル設定の方法は下記の3種類です。
①実在型モデル:ハイパフォーマー自体をモデルに設定する方法です。特定のハイパフォーマーの個性のみを反映させないように注意が必要です。
②理想形モデル:理想的な架空のモデルを設定する方法です。ハイパフォーマーのコンピテンシーを結びづけることも可能ですが、ハイパフォーマーがいない組織でも理想形モデルなら設定できます。
③ハイブリッド型モデル:実在型と理想形の良い部分を組み合わせたモデルです。理想と社員の到達のしやすさのバランスを考慮して設定できます。

企業や部署のビジョンに照らし合わせる

ハイパフォーマーの調査から抽出したコンピテンシーでモデルを設定したら、企業や部署のビジョンに照らし合わせ、調整しましょう。
組織ごとに必要な人材は異なるため、その組織において活躍できるモデルを設定しなければなりません。
一見優れた行動規範でも、場合によっては排除する必要があります。
一般的に優秀なモデルではなく、企業や部署で「目標にすべきモデル」となるよう調整しましょう。

コンピテンシーのレベルを設定

コンピテンシーとモデルを準備できたら、社員全員を評価できるようレベルを3~5段階で設定します。
それぞれのコンピテンシーレベルに対し、明確な基準を当てはめます。

基準を曖昧に設定してしまうと、いざ評価を下す際に、人事評価担当者の感性が影響してしまい、本来の機能が損なわれてしまいます。
それぞれのコンピテンシーレベルを入念に設定しましょう。
また、適宜コンピテンシーをテストし、場合によってはブラッシュアップが必要です。

コンピテンシー導入の注意点

コンピテンシー導入の注意点は、時間が必要なことです。
正しく設定し導入できれば多くの場面で機能するコンピテンシーですが、導入に値するコンピテンシーを作成するには時間がかかり、人件費も投資しなければなりません。
コンピテンシーの作成を妥協すると、恩恵を受けられず、費やした時間と費用は無駄になります。
またコンピテンシーは一度作って終わりではなく、繰り返しテストし、研鑽し続けなければなりません。もしコンピテンシーを導入するならば、じっくり腰を据えましょう。

導入には労力を使うコンピテンシーですが、それを考慮しても有り余るメリットがあります。企業の現状とコンピテンシーを導入した場合を比較し、導入を検討しましょう。

リーダーシップ研修でコンピテンシーを強化

リーダーシップ研修は、個人の潜在能力を引き出し、チームを導くためのコンピテンシーを総合的に養成します。

リーダーシップ研修を通じて、自己認識、目標設定、意思決定、チームビルディングなどの重要なスキルが強化され、これらは効果的なリーダーシップを発揮する上で不可欠です。参加者は実践的なシナリオを通じてこれらのコンピテンシーを身につけ、即戦力としての資質を高めます。

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