人材育成

【パワハラ裁判実例 -1】上司からの有給休暇取得の妨害行為

有給休暇届け書

働く人に認められている有給休暇。2019年の労働基準法改定により、年10日以上の有給休暇が与えられる社員には年間5日以上の有給休暇取得が義務となりました

しかし、義務の分は取得するが、残りの日数は申請しにくいと感じている人も少なくありません。
有給休暇の申請をしたにも関わらず、申請が通らない、一応は通るが上司に嫌味を言われるなどの経験をした人もいるのではないでしょうか。

今回はこの有給休暇を巡り、パワハラ裁判になったケースをご紹介します。
会社として、上司として対応を間違えると、訴えられてしまう可能性がありますので、注意が必要です

パワハラ裁判の実例

弁護士
概要

社員が上司に1日間の有給休暇の申請をおこなった。社員はこの他に、同月末にリフレッシュ休暇と翌月には1日間の有給休暇の申請がなされていた。

上司からは

今月はリフレッシュ休暇も取る予定にも関わらず、有給休暇も取得すると会社からの心証が悪くなる

どうしても取らなきゃならない理由があるのか

これだけ休んでも良いのであれば、会社には必要のない人材と上から言われても仕方がない。私はそのことについて擁護するつもりはない

そんなに仕事がないのであれば、仕事を与えるから有給休暇取得日に出勤してくれ

などと言われた。

ここまで言われ、社員は有給休暇申請を取り下げた。

その後、有給休暇取得予定日だった日に上司がおこなうはずだった仕事を割り振られ、管理職が参加する会議では、上司の言動は間違っていないと擁護する発言があった。

さらに社員全員が出席する社員集会では、会社代表からこのような言葉があった。

上司の行動はパワハラではない

今後は有給休暇取得は良く考えてから取るように

裁判では一連の流れはパワハラであると認定され、会社と上司に損害賠償支払いの命令が下された。

裁判でのポイント

裁判所
一審と二審では解釈に違いがありましたが、次の3つがポイントとなりました。

有給休暇取得は誰にも邪魔できない

有給休暇は労働者の正当な権利です。申請された場合、会社は特別な理由がない限り認めなければなりません。

本人の承諾なく、取得予定日に仕事を割り振るなどは、権利を妨げる行為として認められました

また、上司から「どうしても取らなきゃならない理由があるのか」との言葉がありましたが、有給休暇は理由の申告はしなくても良いとされているので、これも特別な理由がなければ答える必要はありません。

間接的な取り下げ行為

有給休暇を取らせない、申請を取り下げるようにという直接的な言葉はありませんが、「評価が下がる」「会社に必要のない人間と言われる」など、有給休暇を取ることで社員が不利益を被る可能性があることは、間接的ではありますが、妨害行為と判断されました。

個人の尊厳を侵害

管理職が参加する会議では、会社員個人の名前を出して話し合う必要はなかったと判断されました。

個人の名誉を侵害するとし、社内にとどまっていはいますが個人名を出すのは注意が必要ということになります

また、社員集会での会社代表の言葉も社員の申請に問題があったような言い方は名誉の侵害と取られかねません。

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適切な対処方法

部下に怒りをぶつける上司
有給休暇の申請で不当な扱いをされたと感じた時、3つの対策方法が考えられます。

取得できない理由を聞く

先にも述べましたが、有給休暇は特別な理由がなければ拒否できません。正当な理由がない場合は、パワハラの可能性が高いと判断できます。

会社からの理由に納得出来たら、申請を取り下げるか、時期をずらすなどの対応をすると良いでしょう。

不当な理由や拒否理由が明確ではない時は、その場で反論せずに各種相談窓口に相談をします。

取得時期について相談をする

申請が通らなかった時は、もし日程をずらすことができるのであれば、時期をずらして申請し直しをしてみると良いです。

それでも取らせてもらえいないようでしたら、パワハラの可能性が大きくなりますので、対応が必要になります。

社内外に相談をする

パワハラかもしれないと感じた時は、社内の相談窓口に相談をします。

社内で相談をしても、何もしてくれないのではないか、自分の立場がさらに悪くなるのではないかと心配になるかもしれませんが、企業には有給休暇申請が適切に扱われているか調査する役目があります。

社内で相談することに抵抗がある、相談をしても対応してもらえなかった場合は、社外の機関に相談をします。

労働基準監督署では企業に対して労働基準法に基づいて指導をしてくれます。

会社には相談した事実を伏せることも可能ですし、名前を出すことも可能です。

外部機構に相談をする場合は、証拠が必要になりますので、有給休暇の申請を拒否された事実がわかるメモや音声などを準備する必要があります。

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パワハラを起こさせないために

雰囲気のよい会社
有給休暇に関するパワハラを起こさないためには、企業全体で取り組みをする必要があります。

例のように裁判になると企業の名前が表に出てしまうことがあり、信頼が落ちてしまいます。

有給休暇を取りやすい雰囲気作り

遠慮せずに有休休暇を取りやすい環境作りは大切です。

上司自ら取るのも良いですし、部下に定期的に有給休暇取得を促すのも良いでしょう。この時、無理に取得を促すとこれもパワハラと捉えられてしまう可能性がありますので、注意が必要です。

良い仕事をするためには、しっかりリフレッシュすることが大切です。休むことは当たり前という認識を全員で持てるようにしましょう。

社内の相談機関を機能させる

パワハラかも?と不安になった時に相談しやすい環境と体制を整えます。

相談をした人の話を聞くだけではなく、社内調査をし中立な立場で判断できるように相談担当者の教育も必要です。

この例では、社内調査や倫理委員会の開催が遅かったなど、対応が不十分だったと判断され、会社にも責任があると認定されました

相談窓口があるというだけではなく、機能していることが必要なのです。

そして、社内に相談できない人もいる可能性がありますので、社外の相談窓口の案内もあると良いでしょう。

周囲と調整する

個人でできる対策としては、周囲との調整をするようにしましょう

よほどの理由がない限りは、

  • 繁忙期を避ける
  • 他の人と休暇希望日が重なっていないか確認する
  • ひと月に複数の休暇の申請は控える

など、周囲への配慮ができているとトラブル回避につながります。

権利を主張するには、マナーや気遣いが必要です

企業側では、有給休暇を控えて欲しい時期を知らせるなどの対策があるとわかりやすく、問題が生じにくくなります。

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