企業は人材育成を効率的に行い、個人の持つ能力を最大限に発揮し、仕事に取り組んでもらいたいと望んでいるはずです。
しかし、実際に育成を進めていく中で、さまざまな課題が持ち上がり途中で中断してしまったり、思うような効果が上がらず諦めてしまったりするケースが多々あります。
ここでは、人材育成に立ちはだかる3つの課題と解決方法についてご紹介します。
- 時間の課題
- 意識の課題
- 時代の課題
目次
人材育成を阻む時間の課題
ひとつ目の課題は『時間』です。
労働政策研究・研修機構の調査によると、人材育成における課題の第一位は『時間的余裕がない』になっています。
企業は人材育成をしたいと思っていても、時間がないため十分にできないと考えているのです。
どのようなことが原因で時間が課題となっているのでしょうか。
労働、雇用体系の多様化
以前の日本は終身雇用が当たり前で、正社員として働くのが大多数という時代でしたが、現在は短時間労働、パート、アルバイト、フリーランスというように、働き方や雇用形態が多様化してきています。
そのため、管理職が正社員で他の職員はパートという職場や部署も珍しくなくなってきています。
パートやアルバイトの場合は、働く時間が限られており、シフト制で勤務していることも多いため、教育をしたくてもまとまった時間を取るのが難しい状況になっているのが現状です。
人材不足による労働量の増加
どの業界も人材不足が叫ばれており、ひとりにかかる負担が多くなっています。
残業は当たり前、休日も会社には行かないけれど家で仕事という人も多いのではないでしょうか。
そのような状況の中で人を育てる時間的な余裕がなくなるのは、当たり前かもしれませんね。
人材育成の優先順位が低い
多忙な毎日で時間に追われるように過ごしていると、どうしても目の前の業務に意識が集中し、直接仕事に影響の出にくい部分は後回しになってしまいます。
企業はいかに社会貢献をしながら業績を伸ばすか、会社として成長させるかに焦点が当たります。人材を作ることがどのような効果を生むのかという、人材育成の目的をはっきりしていないと優先順位は下がっていきます。
時間ができたら・・・と思っているうちにあっという間に時間だけが過ぎ、次世代を担う人材がいないということになってしまいます。
社会貢献をしながら企業価値を上げ、人材育成もできる”プロボノ”とは?
人材育成の邪魔をする意識の課題
ふたつ目の課題は『意識』です。
計画や結果は目に見えてわかりやすく評価しやすいのですが、意識は形にしにくいため少々厄介です。
具体的にどのような意識が人材育成を邪魔するのでしょうか。
人材育成に対する認識が低い
それぞれの企業には独特の考え方があると思います。
企業風土と表現されることが多いですが、企業全体の価値観が人材育成について明確なものを持っていないと、研修等を実施したとしても表面的であいまいなものになってしまいます。
人材を育てることは、誰かひとりがするのではなく、組織や会社全体で取り組まなければ上手くいきません。
社員ひとりひとりの意識が良い教育環境を作るのです。
担当者の教育が伴っていない
人材育成というと、入社したての若手社員に対してというイメージになりがちですが、教育を担当する中堅社員の教育も重要になります。
管理職になったからといって全員が部下育成に長けているとは限らず、指導する側を育てるところから始めなければなりません。
現状把握が薄い
育成を進めるためには、目標設定が大切になります。
そのため、どのような人材をいつまでにどのくらい育て上げたいのか、どのようなスキルを習得してもらうのか、担当や役割分担をどうするかなど、事前準備が必要です。
人材育成をするには、現状の課題や不足な人材などの把握をし、教育方針を具体化します。
この現状把握が十分でない場合、どんなにがんばっても有効な結果には結びにくくなります。
人材育成のハードルを上げる時代という課題
3つ目の課題は『時代』です。
時代の流れに敏感になれるか、対応できるかがカギになります。
業界や世間の流れ、流行りなどにはアンテナを張り情報収集をしても、それ以外の部分に関しては手が回らないというのが現状かもしれませんね。
若者の仕事に対する認識の変化
社会人としての心得や仕事に対する考え方も、時代と共に変化してきています。
仕事優先で家庭やプライベートは二の次、休みも付き合いや接待で終わるという時代はもう古くなっています。
今は、仕事よりもプライベートを優先させたい人が増え、スキルアップや昇進などにあまり興味を持てない若者も増えてきています。
そのため、人材育成をしようとしても会社と若手職員との間に見えない厚い壁ができてしまうのです。
管理者が時代の変化を実感していない
ある一定以上の年齢では、『仕事は先輩の背中を見て覚えるもの』という認識があります。
これは間違ってはいませんが、現代には通用しにくいものとなっています。学校教育が変化しており、20年前、30年前の常識は今や非常識とさえ言われることもあります。
世間の流れだけではなく、社内の空気感や労働環境などへの要望、悩みなど、現場の声も変化している可能性があります。
そこに気づかずに一般的な流れで進めて失敗したというケースもあります。
教育方法の見直しが不十分
人材育成を行うために、計画を立てていると思います。
計画は定期的に見直しをしているでしょうか。
作った当時はどんなに良いものでも、時代が変われば教育カリキュラムも変えていかなくてはなりません。
以前は技術向上をメインとした研修等で良かったものが、現在ではメンタルヘルスや自己啓発に関するサポートも必要性を帯びています。
ITリテラシーに関する教育も必須と言えます。
誰しもがSNSのアカウントを持っている時代です。社員ひとりひとりにSNSの適切な運用方法を教育することは、会社を守るための重要なマネジメントのひとつと言えます。
時代にあった教育計画になっていなければ、効率的な育成は望めません。
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人材育成の課題を解決する方法
ここまで人材育成を行う際に壁となる3つの課題をご紹介してきました。
その壁を超えるのは、簡単ではないかもしれませんが、絶対に無理でもありません。
越えるために、どのような考えや行動が必要なのか考えていきましょう。
時間管理の徹底
まずは時間の確保が必要です。
多くの企業ではOJT(現任訓練)と言われる、現場での実践を通して教育していく方法を採用しています。
良い人材を育てようと思うと、実務的な指導だけではなく、複数の社員全体に向けた集団研修も必要です。
そのためには、まとまった研修時間を確保する必要があります。
時間管理というと、スケジュール管理を想像するかもしれませんが、ここでいう時間管理は時間の確保を目的とするものです。
どの時間にどの研修を入れるかではなく、どのくらいの研修をしたいからその時間をどう捻出するかを考えるのが大切なのです。
時間を作るには、業務の見直しをし、効率良く仕事ができるように会社全体で改善策を講じる必要があります。
『時間は作るもの』と考えられるかどうかが、人材育成の重要なポイントです。
人材育成は管理職から
自社で人材育成を行おうとすると、担当する社員や管理職の教育から行うことが大切です。
人材育成には上司と部下、新入社員と先輩社員の人間関係も大切な要素です。
部下に対して、後輩に対してどのように接し、どのように指導をしていくのか、そのノウハウを身につけ実践し、リーダーシップを思う存分発揮してもらいましょう。
部署異動や新しいプロジェクトに参加させるなど、より多くの経験を積む機会を作っている企業は多いと思います。
その他にも、経営者を含めた管理職、教育担当者が集まり、育成に関する知識を共有をする場を設けるのも良いですね。
ジェネレーションギャップを埋める
人材育成には、指導する側とされる側の相互理解と信頼関係が必要です。
20代と50代では通ってきた道に違いがあり、学んできたことや指導されてきた内容は同じではありません。
自分の時代はこうだったから、今はこうだからというように、それぞれの視点からの考えや行動ではなく、お互いの考えや仕事の仕方について理解しあう姿勢を持つことが大切です。
「今の若いモンは・・・」
「昭和の考えは・・・」
と、言いたくなる気持ちもあるかもしれませんが、そこはグッと堪えて、お互いの話を聞き距離を縮めるところから始めてみましょう。
一方的に自分の主張したいことを言っても、課題解決にはなりません。
まとめ
人材育成を進める時に、『時間・意識・時代』が悩みの種になります。
3つの悩みを解消するには、時間管理の徹底、管理職の育成、ジェネレーションギャップを埋めることが重要です。
今ある宝(社員)を会社全体で磨き、将来のリーダー育てましょう!
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